あの星への願い

前夜編


7月5日

日本 初音島 芳乃家


朝だ。ああ、朝だった。

ちょっと寝ぼけつつも、ボクはおきた…うぅぅん…やっぱり、お兄ちゃんと昨日話しすぎたのがよくなかったのかな…?

「ふぁ〜〜ん…」



自分でも呆れるほどのアクビが出た。


期末テストも終わって…お兄ちゃんはボクが時々教えてあげているだけあって…まあまあの点数を出していたからいいとして…

ボクはゆっくりといつもの…いくつのか服を取り出した。



今日は土曜日。私立なのに風見学園は土曜授業というものがないからね…ある意味ボクは助かっているけど。

「これかな?」


自分のその日の気分に合わせてボクは服を変えているけど

お兄ちゃん疑惑『さくらって、ほとんど曜日によって着る服決まっていないか?』とのこと…気分で決めているとその日の気分はその曜日によってボクはどうやら決まっているらしい…

ただし、今日は新しい服を買ってあるから問題ないんだぁ〜〜お兄ちゃんのために新しい服を…と言いつつ実は小さくなっただけなんだけどね。

今のボクはちょっぴり大きくなって148センチ。もちろんそれなりにほかも大きくなっているけどここでは省略ね。

魔法が切れてから少しずつボクは成長を続けていた…ただ、それでも小さいのは変わらないから

『やっとさくらにも成長期が…もうすぐ終わるだろうけどな』なんてからかわれるし〜〜ううぅぅ〜〜〜


とにかく着替えて、一通りの身支度は用意する。

今日はお兄ちゃんとデートなんだぁ〜〜いいでしょうぉ〜〜

音夢ちゃんは7月6日…明日に帰ってくるらしいけど、それより前にボクが得したって悪いことじゃないからね。


「ふぅ…さてと…」


用意万全。後は家から出ようとしたときだった。

かっこよく言えば『運命の鐘』、普通に言えば電話が鳴り出した。まったく、こんなときに…と思いつつ電話に出た。



「はい。もしもし芳乃ですが?」


『はい。もしもし。こちらも芳乃です♪』



…この声。このからかい方…しかも、まるで楽しんでいるかのような声の弾みよう…



「…お母さん。何?」




そう。ボクの母さん。正確には芳乃深夜(よしの みや)母さんだった。

長い間ボクをおばあちゃんに預けて仕事一直線な生活を送っていた張本人であり

同時にアメリカで物理化学方面の第一人者として頑固たる地位を持つ…こういう部分は母さん似なのかもね…生物化学専攻のボクって…



『せっかく暇が取れたから電話しているのに何って聞かれるとは…』



「ボクをおばあちゃんに長い預けて、その後も面倒と言う面倒を見なかった母さんにボクが何って言って悪いのかな?」



『それは…まあそうだけど。でも、私はさくらの母である以上ね…そうそう、そういうわけでそっちに帰るから。』



・・・?


なにか、今、ボクの耳になんか変な声が聞こえたような…
仕事のためなら自分の子供の面倒を見る時間までつぶすような母さんが…か、帰ってくるって言ったような…



「な、なに?なんで突然帰ってくるの?」



『母さんのお墓に花でも添えないといけないし…まあ仕事はほとんど片付いたんだもの。

あの人はまだ仕事が残っているでしょうけど、まあ単なる帰郷だから行ってくればよいって言っていたし。』



あの人というのはちなみにボクの父さん。ちなみにアメリカの人だからここでは省略ね(なんかこの言葉が多いよね)



「だからって戻ってくるって…」



『いいじゃない。この前ちょうど耶依と話してね。純一君とラブラブらしいじゃない〜〜聞いていないわよ〜〜』



ちなみに耶依さんは本名『朝倉 耶依(あさくら やえ)』さん。当たり前だからお兄ちゃんのお母さんで、多分情報源は音夢ちゃんかな?

母さんがこんな調子で結婚しても婿養子にさせたから、耶依さんと母さんは姉妹。
母さんが姉らしいけど、見るからに優しさだけなら耶依さんなんだよ〜〜♪


まあ、ボクの母さんも優しくないとは言わないけどね。
というよりも、これだと単なる女友達みたいな会話だよ…お兄ちゃんに朝ごはんの支度と起こしてあげないといけないのに〜〜


「ボクの勝手だよ〜〜それよりも、なんでだからってボクに電話してきたの?食事とか?」



「いいえ。食材その他は買ってあるし、ただちょっとね。」



「そう…って…なんでここに母さんいるの?」



からかいながら母さんが振るのは携帯電話…

しかも衛星電話…電話料金高いのにかけっぱなしにし続けていて、しかも近くにいるっていうのが…



「さあ?」



さあって…なんか、本当に一回魔法で消してあげようかな?

おばあちゃんのところにでも行けばさすがの母さんも…



「って冗談だってっ!ちょっとチャーター機とヘリコプターで直接移動してきただけだから。」



「さすがはアメリカでもベスト100に入る億万長者・・・母さん、ほとんど貯金しているから使うのはいいけどなんか時々何がやりたいのか分からなくなることがあるよ…」



わざわざ初音島に来るのにチャーター機で日本まで来て、初音島までヘリコプターで移動する人がどこにいるんだろう…

ボクは女の子らしくない一人称だって言う人が時々いるけど、ここにいる母さんの場合『人』らしくないよ。



「さて、耶依から純一君も見てきてほしいって言われているから、朝倉家にでも行きましょうか?」



「ボクはまだしも、母さんじゃ窓から入れないと思うけど?」


「あら。まだやっていたの?大丈夫。耶依から合鍵もらってきているから。」



母さん用意がよすぎるよ…たぶん、鍵がなかったらピッキングでもするんだろうなぁ…




お兄ちゃんの家の前。


母さんが得意げに鍵でドアを空ける…

得意げにする母さんって、いつまでたってもこの人だけはボクにもよく理解できない…
と、とにかくお兄ちゃんを起こしてこようっと♪



「じゃあ、ボクはお兄ちゃん起こしてくるから母さんはご飯作ってよ〜〜」

そう伝えてボクは二階に走っていった。

ドアを空けると…やっぱりお兄ちゃんは寝ていた。



「あら、かわいい純一ちゃんがだいぶ成長している。まあ最後に見たのがもう何年前か忘れるぐらいだったから無理はないけど。」



「…母さんって、どこまでも母さんだよぉ……」



ある意味、杉並君に通じるものがある気がするけど口に出すのはやめようっと…
いやな感じが思いっきりするから。


「とにかく、母さんは下で料理作っててっ!お兄ちゃんを起こすのはボクの仕事なのっ!!」



「分かった分かった。私はあなたの母さんだから明日は私があなたを…」



なんか、明日がすごし怖くなってきたよぉ…とにかく、母さんを強引に下に連れて行って、そのままお兄ちゃんのところに戻ってっと…



「お兄ちゃん〜〜〜〜♪」



「ううっっ…っておぉっ!!」


ドスンッッ!

なんか、ちょっとオーバーな擬音語が鳴り響いたような気もするけど…単にボクはお兄ちゃんの上に乗っただけなのだぁ〜〜


「さくらぁ…ちょっとは体重が増えたことも自覚しろ…」



「レディーに体重とは失礼だよ。お兄ちゃん。まあ、成長しているからね…ごめんね。」



なんかさすがに苦しそうなお兄ちゃんを見ていたら謝らないと行けないような気がしてボクは謝ったよ。



「いや、謝らなくてもいいからどいてくれないか…」


「あっ…忘れてたよ〜(汗)」



急いでお兄ちゃんから降りて、とにかく揺さぶって起こしなおす。



「お兄ちゃんぁ〜〜朝だよ〜〜起きないとボクが怒っちゃうぞ〜〜」


「お前の怒るところか…興味があるから寝るか。」


「こらぁ〜〜もう。お兄ちゃん〜〜起きてよ!!おきなさいっ!!朝倉君〜〜」


まったくぅ〜〜毎回ボクが起こしにくるとこうやって寝ちゃうんだから。

音夢ちゃんだったら…ううん。それは考えちゃいけないよね…とにかく約10分間の攻防の後、やっとお兄ちゃんは起きてくれた。



「まったくお兄ちゃんったらおきてくれないんだもん。」



「休日の午前中ぐらい寝かせてくれ…俺の本能からの頼みだ…」



お兄ちゃんってなんでこんなにいつも寝るのがすきなのかな…と思いつつ一階に降り立つボクとお兄ちゃん。


「久しぶりに和風料理作って見たけど、やっぱり料理に関しては私は天才的だわ。」



「…誰だ?」



…まあ、ボクだって一年に一度は見ていないと多分忘れるぐらい会わないからね…母さんに…

お兄ちゃんからすれば、リビングに金髪の美女が料理作っているんだから驚くのも無理はないのかな?


「あら、純一ちゃん。おきたの?まあ、記憶を頼りに適当に日本の朝食を作って見たんだけど?どうかしら?」



「あっ、えっと…あの…」


にゃはは〜〜お兄ちゃん慌てているよぉ〜〜

普通に美女に誘惑されているならボクも許せないけど、ボクの母さんで今でも万年新婚夫婦って呼ばれているからね〜〜

まあ、どっちにしてもお兄ちゃん〜〜ボクというものがありながら〜〜(怒)


「まったく、母さんっ!ボクのお兄ちゃんを誘惑しちゃだめっ!!」



「か、母さん?!あっ、よく見ればどこかで見たことがあるとは思えば…」



「ようやく思い出してくれた純一ちゃん?実は最後に来たのは音夢ちゃんがこっちに預けられてほどしないときなんだけどね?」




そういわれて今度ははっきりとお兄ちゃんは思い出したみたい。



「ああ…思い出したっす…にしても、こんなときになんか用っすか?」



とりあえず、先に食事をとり始めながら話を始める事にして、お兄ちゃんとボクが北側、母さんが南側の席に着いた。



「母さんのお墓参りと…まあ色々と思い出のある町に来たかったというところかな?」



「思い出…っすか?」



「そう。七夕の思い出。日本はそろそろそういう季節でしょう?」




確かに今日は7月5日で、数日で7月7日の七夕だけど…そのためにわざわざチャーター便とヘリコプターを使ったのかな?

「ちょっと悲しい話なんだけどね…私の初恋の相手がね…まあ、色々とあったわけね。

まあ、そんなことにはしたくない意味で、私はさくらがここに戻ると言ったときに承諾したわけなんだけど…

ともわれ、お二人がツンツンデレデレな日々をすごしているかと思ったら、デレデレデレデレな日々をすごしていることがはっきりしたわ。」



あははぁ…と笑うしかないボクとお兄ちゃん。

一応、学校では公私の区別はしているけど、逆に言えば私生活では…確かにデレデレかも。




とにかく、7月5日。いきなり母さんは帰ってきた…

その次の日、音夢ちゃんが帰ってくるその前日に。