悩んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ?いったいなにに?

などと聞いてはいけない。

桃色の髪が印象的な彼女はとにかく悩んでいたのだ。

目の前には、あの騒動後(アキト捕獲作戦)にアキトと一緒に来たテンカワ家のキッチン…

 

今日は、ルリが久しぶりに戻ってきており、アキトとユリカはルリと買い物だ。

これで以外と思いやりのある彼女…ラピスは、ルリと三人だけの時間を楽しんできてください、と言ったのだ。

 

うん、これこそ親子愛だ…などと感心してはいけない。

アキトはすっかりというか、なんというか…お昼の用意をしていなかったのだ。

不覚としか言いようの無いことだ…

 

それゆえに、彼女は悩んでいた…

 

(お昼…私が作るの?)

 

 

 

 

 

 

新たなるナデシコ物語

外伝 第一話 ラピス・ラズリの場合


(外伝と言いつつも、実は単に初期のアキトが帰ってきた設定だけ使った、ほのぼの系の話っていうのは気にしないでくださいな)

 

 

 

 

 

 

ラピスの目の前には、巨大な食べ物を保存する箱がその威厳を堂々と見せ付けていた。

これで、ラピスはルリと同じ年といううわさもあるほどだ(笑)

いや、実際にそうなのだ。彼女の設定資料の年齢は不確定で、11から16となっている。

もっとも、あの身長の小ささは11と仮定しても小さいので、基本的にはテロ騒動時には11歳と見られていたが…

 

 

と、とにかくだ。そのデカイ箱…

ラピスの知識はそれが冷蔵庫と言うものだという事を理解していた。

もっとも、ここに来る前まではさっぱりだったが…(微笑)


 

だいたい、黒の王子様状態のアキトは料理など作ってくれなかった。

そのため、こんな食品の衛生状態を保つ画期的なものが(ラピス視点)あることに、ラピスは人類の英知について

深く考えさせられたわけではないが、凄いもの…とそう言った認識をしていた。

本当に一般知識が無いと、こう思ってしまうのだから怖いものだ。

 

そんなときだった。


 

ピンポーンッ!

 

このそれほど大きいわけではない家の玄関のチャイムが盛大に鳴り響く。

まあ、小さくて周りの家と比べればぼろい、この家で盛大に、という表現はヘンだけど…チャイムが鳴る。


 

「ワ、私がでないと…」



いつもなら、ユリカかアキト、2人がいないときに面倒を見てくれるルリが来客には出てくれるのだが

あいにく、今日は三人ともいない。

 

ちなみに、この地域は防犯徹底殲滅地区(ちょっと危険な響き…)なため、犯罪者は絶対に近づかない。

だいたい、時々軍の人間が無許可発砲するほどの地区だ。はっきり言って、犯罪者にとっては中東のテロ地域並みの危険度だ。

 


そのため、ラピスも安心して(?)来客のためにドアを開けられるというわけだ。

 


いざ、ドアの目の前に立ってみると緊張する…

今までやったことの無いことに挑戦する…しかも、それが留守中にドアを開けるということだとしても、緊張するものだ。

 


それこそ、アマテラスでアキトのサポートのために始めて戦艦を動かしたとき並みに…とラピスは心の中で感じた。

比較対象が非常に斬新で恐ろしい気がしないでもない(笑)

 


(で、でも…空けなくちゃいけないよね……)

 

ラピスはそう心の中で意を決するとドアの鍵を開けて、はい…?と言いながら空ける…すると…

 


「えっと……マキビ…」

 


「マキビ…マキビ・ハリです。

あの、ルリさんは…?」

 


幼さがまだ残る顔に、普通に戻したボサッとした髪…

そして、青色の瞳は、ラピスが何度かルリと一緒にここに来たりしていた男の子…マキビ・ハリであった。

どうやら、彼はルリが今日、アキトとユリカと買い物に出かけている事は知らないみたいだ。

 


「ルリなら、アキトとユリカとお買い物に…」



「あっ、そうなんですか。あの人、艦内の生活品の補充資料にチェックつけないで帰ったので許可貰いに来たんですけど…

でも、ラピスさんは、なんでここに?」



「ルリが久しぶりに帰ったから、ユリカとアキトと三人だけにしてあげようと思って…」



ラピスの戸籍上の年齢はハーリーと同じ事になっている。

まあ、見た目が11歳ならハーリーと同じ年と言ってもなんら問題は無い。

もっとも、薄々感じ取っているのかハーリーはラピスのことをさん付けで呼んでいる(たぶん、年下でもハーリーはさんづけだろうけど)

それは、ラピスにとって良い意味でのプラスになるものだった。

アキトはラピスであったし、ユリカはラピスちゃん。ルリはラピスさんだったが歳の差がありすぎた(??)

いや、精神的な歳の差がありすぎた。感情や知識の日常生活レベルで歳が一桁なラピスでは、ルリはお姉さん…しかも歳の差がある。

だが、ここにいるハーリーは歳の差が小さい(実年齢で言えばラピスがお姉さんだろう)

 

「そうですか…はあ、せっかく材料も持ってきたから、ここに料理でもしようと思ったのに…」

 

 


グットタイミング

 

 

その言葉がラピスの中に浮かぶ。

ラピスは料理が出来ない→ハーリー登場→ハーリーに料理をしてもらう→お昼にありつける

一瞬でこの構図がラピスの頭の中には完成したようだ(笑)

 

「…料理してくれる?」



「へぇっ?」



あまりにも意外なラピスの一声。

今まで、ハーリーはハーリーから声をかけてラピスが返す、といった事はあっても逆など、まずなかった。

というか覚えに無い。

少し驚いたが、一瞬で大体の理由は分かった。ハーリーもそういうことは自分の経験が意外とある。

家庭的なマキビ家では、両親が料理がダメなため、ハーリーや補助のお手伝い(ヒスイ&メノウ)がいたわけだが

むかし、ヒスイとメノウが2人で出かけたとき、姉が困っていたところを研究所からの帰り、見た覚えがあった。


『お、おなか空いたわ…ハーリー…♪』


なぜ、最後がおんぷなのかなど知らないが、それと同じような状況なのだろう。

ハーリーの特技である料理で、アキトに中華料理について教えてもらうつもりだった

のだが、まあ、ここにある材料で他の料理を作ることも可能であるし

なにより、お昼に困っている様子のラピスをこのままにしておくわけにも勿論いかない。

なんというか…可哀想過ぎる。

こんなところが、メノウが


『ハリ様って、基本的にお優しすぎますね。こんな人に思われているルリさんも相当幸せでしょうに。』


などと皮肉を込めて、あえてブラコンな姉のいる前で言う理由だろう。

そういうところは、アキトと似ているのに、なぜかアキトのようにいかないのがボケキャラとしての彼なのだが

どうやら、今回はうまく動くようであった。

 

単刀直入にいった言葉で一瞬、ハーリーが茫然とすると

ラピスは反応に困った(汗)



やっぱり、ダメなのかな…

失礼だよね。いきなり、そんなこと……



にわかに目に水がたまりそうになったときだった。




「まあ、いいですよ。このまま家に戻っても意味無いし…

今日はヒスイさんも買い物に言ったついでで食べてくるらしいですから、家でも結局僕が作らないといけませんから。」

 


 

 


というわけで、ハーリーはラピスに連れられてテンカワ家の中に入った。

内心、ラピスは少し嬉しかった。

料理が…というよりも、ルリの思い人(勝手にラピスはそう判断している。本人に聞くと顔を真っ赤にして否定するが)である

ハーリーとは話した事など殆どなかったわけであり、今、困っていた自分を見て助けてくれた

ハーリーに親しみを持ったからでもあるのだろう。

ラピスは人見知りが強いタイプだから、そう易々受け入れられたハーリーは好印象だったのだろう。

こんなことは勿論知らないハーリーだったが、それでも中に入って見て…

 

(今、この家の中って僕とラピスさんだけってことだよね…あはは……)

 

この少し前、サブロウタに『艦長以外の女に手を出すなよ〜〜』とからかわれたばかりであったため余計に響く。

いや、別にそんなラピスさんと仲良くなりたいとか、そんなことを思って承諾したわけではないし

ルリさんと二股だなんて訳でも無いし…などとラピスの思いとはまったく関係ない方向に考えてしまうハーリー

こういったところが、彼がボケキャラ要員とされる尤もなところだろう。煩悩がやけに大きい。

 

「えっと、ラピスさんは何が好きなんですか?」


材料には、ルリの好きなラーメンと自分の好きなオムライス(DC版 NADESICO THE MISSONの設定より)

の材料は持ってはいるし、この一般家庭用よりも大きい、料理には一言煩そうな冷蔵庫を見る限り

大体のものは入っているはずだ。そう思ってハーリーは聞いた。



だが…

 

あっ、私…好きなものが無い…

アキトの料理は何でも食べれるけど、好きという種類の料理はない…そういえば……

ユリカの料理は産業廃棄物ってルリが言っていたし、ルリのは…まずかったし…



無いというのが恥ずかしい…だが、言うしかないので顔を少し俯かせて、それでも顔を真っ赤にしたままラピスは小さくつぶやいた。



「………無い……」



「あっ……そ、そうですよねっ!アキトさんの料理って何でも美味しいから、一つあげてといわれても…ですよね。」

 

そのちょっと照れているラピスの顔に胸はキュンッ!と来てしまったハーリー


ぼ、僕にはルリさんが…でも、今の顔は…いやいやっ!!こんなところでルリさんの妹さんであるラピスさんに…でも…

と、とにかく、まずは料理だっ!!

 

多感というか、むしろボケにしたくないのにボケ役になっているハーリー君。

やはり、彼はボケキャラが似合うのかもしれない(笑)

もちろん、その顔を赤くしたり、そうしたと思ったら手を握って違う違うという行動にラピスは

なにしているんだろう?と思ったが、もしかしたら料理をする前にする行動の一つなのかもと勘違いしてしまったようだ(滝汗)

ときどき、アキトもユリカとそんなことをしていたから(笑)

 

「そ、それじゃあ、オムライスにしますね。僕のイチオシですから、きっと気に入ってくれると思いますっ!

あ、後、少し手伝ってもらえますか。別にただ卵を割ってもらえればいいですから。」



基本的に簡単なオムライスは、チキンライスを作った後でただ薄く焼いた卵を乗っけるだけでよい。

ルリがナデシコ時代、チキンライスが好きだった事をハーリーが知っているわけないのだが、ラピスは

卵を使う料理なんだ…と頭の中で浮かべていた。



「こ、これが卵…」



ハーリーがフライパンを取り出して、チキンライスを作ろうとしていたころ

ラピスは、ハーリーが持ってきていた袋の中から卵を取り出していた。

いつも見る白いものではなく、少し赤茶の色がついた、美味しいといわれる分類の卵だ。

今、ラピスはしっかりとエプロンを着て(子供用…ってハーリーも中学生の家庭科って感じだけどね)準備万全であった。

だが、ルリが卵を奇麗に割るのに十二回ミスしていたことを知っているラピスは

この任務(そういうほどじゃないって)の難易度の高さを感じていた。

 

これなら、アキトに…アキトに料理の仕方、聞くんだった………


 

将来、彼女だって嫁に行くのだ。そして、彼女も精神的に育ちが遅くても女の子だ。

それぐらい思っているし、しっかりとそんな人を作りたいとも思っている。


それゆえに、ここで…自分と殆ど代わらない男の子に卵の割れなかった姿を見せるのは哀しい…とルリが言っていた。

それが少しだけ分かる。ハーリーに見られたら笑われそうで…嫌だった。

もっとも、ルリの料理練習でラピス以下のテンカワ家が『死に掛けた』のは秘密だ(笑)

 


そんな思いで、ラピスは卵の容器から新鮮な卵を一つ出して、ボウルの前にまずはおく。

まさか、初めてなんじゃ…とハーリーは、良く考えれば、あの艦長の料理の悪さと、初代艦長の殺人料理を思い出し…

きっと、アキトさん、自分の身の安全のために料理はさせなかったんだろうな…となぜか共感に近いものを感じていた。


ナデシコCではルリに料理をさせないためにあれこれ考え、家では姉にさせないためにあれこれ考え…共感したのもわからないでもない(微笑)

 

「えっと…卵を割るのは初めてですか?」



さすがに『料理をするのは初めてですか?』と聞く勇気はなかった。

とこはかとなく、ラピスの卵を持っている姿がルリに被って、しかも機嫌が悪いときの…である。

ちなみに、そんなときのルリを怒らせるとハーリーはほぼ死んじゃうらしい(笑)

 

「えっ?……そ、そうです…(赤面)」

 

ルリなら言われた事をごまかすとか『まさか、何言っているんですか。』などというのだが

あいにく、ラピスはそんな性格の持ち主ではなく、聞かれた事は言ってしまうタイプだった。

まあ、可愛い♪などとカナなら抱きつくタイプの性格…素直だった。



しかし…卵を割った事の無い自分を心配してくれるハーリーさん…さすがルリの思い人(本人は必ず否定している)です…



そんな風に思うラピス。だが、ハーリーはと言うと…

 

い、いやっ!

鎌の顔が凄く可愛かったけど、だからって僕はルリさんが…で、でも…

う、うん。ルリさんの妹さんって言う事で、それなら……


自分への言い訳を並べていた。ちょっと情け無い光景だが、常識が失欠しているラピスにはさっぱりだった。

と、ハーリーも顔を真っ赤にしてラピスの手をつかむと、卵を持たせる。

 

「えっ、えっとですね…こうやってですね…こうするんです。」


ハーリーは、ラピスの手を持ってラピスの持っていた卵をうまく割る。

こんな状態でうまく割るハーリーに少し尊敬すら覚えるラピス。



料理が出来るって…凄いことです…アキトも凄い…ルリやユリカはダメだけど、料理って男の人がやることなのかな?

 

いいえ、通常は女性がやるものです(爆笑)



更には、ハーリーがラピスの手をつかんでいるのだが、こういったことにはラピスは疎かったようで、ハーリーだけが顔を赤くして

ラピスはなんで赤くしているのか『?』と言った顔で見ていたらしい。

 

とにかく、一度コツをつかんだと自覚したらしいラピスは、。もう一つの卵を取り出す。

つやのある、本当に良い卵だ。今にも子供が生まれてきそうな…(ってことは勿論無いけどね)

 

「割ってみる……」



まずは、ちゃんとした持ち方をする。さっきハーリーが手をつかんだときのように卵の位置と持ち方を変えてみる。

うん、これなら…と思うと、キッチンの角にゆっくりと卵を開けられることを確認する。


よし、これなら…と力を入れて、卵をキッチンの角に当てる…

 

 

「あっ……………」



割るまでは良かった。だが、あまりにも力んでいたラピスは、割った後もそのままの力で卵を持ってしまった。

そのために、卵はその力に耐え切れず割れてしまったのだ。(ちなみにルリは割るそのものができなくて12回ミスしているのでこの時点でラピスの勝利)


だが、今はそんなことが問題ではない。ハーリーに頼まれた事が出来なかった…それが問題だった。

そもそも、ラピスにとって頼み事は『絶対にしなければならないこと』であり、失敗は許されない事だった。

失敗はイコールで死であったから…



だから、ラピスは怖がりながらハーリーの方を向く……

見た目の年齢相応の感じがラピスに出ていた…アキトがこの光景を見れば、驚いていただろうが、ハーリーはこれが普通なのかなと思ってしまった。

ただ、同時に、強張っているラピスを見て、怒られるのではないかと思っているのではないかと感じた。

ラピスにはそれが『死』と直結している事は勿論ハーリーは知らないのだが、ふと、失敗していた卵の方を見て…



「あっ!欠片のせいで手から血が出ているんじゃないですかっ!」


「えっ?」


(卵の欠片で血が出るなんてまずありえない現象だけど、そういうところはラピス特有の肌の弱さとマシンチャイルド、後は作者の都合ってことで)

 

大急ぎで、ハンカチを取り出して、卵を受け取ると手を洗って、ハンカチで地を押さえるハーリー

先ほど同様にラピスの手を持っていたのだが、今度は勿論赤くなるはずもなく、そのまま大急ぎでポケットからばんそうこを貼り付ける。

 

何をしているんですかっ!などと怒られることを予想していたラピスはその行動に戸惑いを隠せなかった。

もっとも、よく考えればユリカやアキトとの生活から、そんな人たちなのだと分かっていたはずだが、料理ではこと、初めての事だった。



「ふう…失敗したからって、血が出ているのに僕に何か言われるのを怖がるなんて…

別に失敗しても大丈夫ですよ。この卵だって使えるし…卵の使い方しだいですけど、今回は混ぜますから大丈夫です。」

 

ばんそうこを貼り付けると、ハーリーはそう言ってラピスが失敗した卵から殻を取り出して…

 


(あっ、ラピスさんの血が入っていたっけ…

で、でも、ああ言った試し、捨てたら問題だし…し、仕方ないっ!このまま入れちゃえっ!!)

 

格好をつけたハーリー、失敗なり(笑)

 

いくら、鎧を纏おうとも、ボケの本性は隠せないのだっ!!(某北辰の言葉より)

 

 

ハーリーは、とにかくそのことは頭から置いておいて、オムライスを作るのに集中する。

といだ卵を焼く前にある程度チキンライスを作る。ラピスはエプロン姿のまま見ているだけだ。

『もう、怪我はさせられませんし、アキトさんやルリさんに何言われるかもわかりませんからね。』

とハーリーが言い、おとなしくラピスが従ったからだ。

迷惑をかけているのは自分なんだから、せめてこれ以上は…とラピスは悔しいながらも、ハーリーが作っている光景を見ているだけだった。

 

そのうちに、ハーリーはチキンライスをまずは完成させる。

この上に薄くした卵を乗っければオムライスの完成だ(一応、母の聞いた話だとですけど…もっとちゃんとした作り方ってあるのでしょうか?)

フライパンに油を入れて、良い温度まで熱してから卵を入れると卵がしっかりと広がって焼けていく。

二回、それをしてちょうどいい厚さの卵が二つ完成する。

 

それを今度は、チキンライスを均等に分けたお皿に乗っけて、完成である。

 

「これが……オムライス?」



「はい。そうです。それじゃあ、あっちの方で食べましょうか。」

 

 

お皿を二つ、運んでお茶などをラピスが用意すると、2人だけの昼食の状態は整う。

 


「「いただきます。」」

 

ユリカみたいに『いっただきまぁっっすっ♪アキトの美味しいご飯〜〜♪』などという癖の無いラピスや

ごく一般的な食事方法だったハーリーは普通にそう言うと、食べ始め…なかった。

 

卵がチキンライスの上に乗っているのだが、果たしてこれは卵を先に食べるのか、それともチキンライスを先に食べるのか…

それで悩んでいたのも事実だが、ラピスとしては目の前でずっと自分の方を見てくるハーリーが気になって仕方ない。

 


「えっ?あまり、お気に召しませんでしたか?」


「うっ、ううん。でも、これは先に卵を…それとも…」


「あっ、ああ。そういうことですか。一緒に食べると美味しいですよ。」



ハーリーにそう教えてもらうと、それでも見続けてくるハーリーの視線は気になったが

スプーンで卵とチキンライスをすくうと一口食べる。


絶妙な卵の状態と、味の染みたチキンライス…アキトに作ってもらった事は無いけど……美味しい…


実際にお世辞でもなく、ラピスはそれを美味しいと思った。

 

「……美味しいです。」


「そうですか。良かったです。」

 

そう言って美味しそうに食べるラピスに、ハーリーは少し見とれたとか見とれなかったとか…(笑)

 

 

「では、今日は帰らせてもらいます。」



食事の後、どうでも良いような話(以外とラピスはしゃべるのが好き)をして、ハーリーはすっかり帰る時間を忘れていたらしい。

まあ、ハーリーとしては気づいていたが楽しそうに自分の話(ナデシコB及びC)の話を聞くものだから

早々話を切ることができなかったんだけどね。


こういうところが、以外とルリにも好感を持たれるところだったりするのだから、ハーリー君って何なんだろうね。

 

「あっ、う、うん。今日は話してくれて料理まで作ってくれて…ありがとう。」



終始真っ赤な顔のままでそういうラピス。

もっとも、彼女はハーリーに話すのが恥ずかしいわけではなく、ただそういうことを言う事が苦手だからだけど。



「それじゃあ…」


「あっ、ちょっと待って……姉さんって言うのは……?」



途中話に出てきたブラコンの姉。

ラピスには一つだけ心当たりのある人間がいた。しかも、苗字はマキビであったりする。



「あっ、ああ…姉さんの名前はマキビ・カナです。まあ、色々と仕事兼任しているそうですけど。

それじゃあ、さようなら。また今度、その時にはアキトさんたちがいるか事前に聞いてきますね。

それとそれと、僕が料理したことは隠しておいてください。いろんな意味でお願いします。」

 

そう言うと同時に、ドアが閉まり、外側から鍵がかかる。

まあ、ハーリーがこの家の鍵持っているの?なんて聞かないでね(おんぷ)

 

もっとも、ラピスはハーリーのオムライスの味のマキビ・カナという…言葉に釘付けだったが。

 


「マキビ・カナ……あの人が……ハーリーさんの姉…今度会ったときには、お話しないといけないのね。

オムライス…今日、アキトに頼んでみようかな?」


どうやら、ラピスはハーリーの姉にあったことがあるようで…

こちらは本編で補充ですから、まあ気にしないでね。

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、その翌日のテンカワ家の夕食はルリも含めて四人でオムライスだったらしい。

アキト達が帰ってきたとき、ラピスに用意するべきだった昼食の用意を忘れていた事でアキトとユリカは謝っていた。

(ユリカはなぜか、半分笑っていながらゴメンねぇ〜〜などといっていたが)

 

「…この匂いは…オムライス?」



「あっ、えっとね……た、頼んで運んで貰ったの。エリナに前に貰ったカードで…」

 

ルリの指摘にそう答えるラピスに、アキトとユリカはよく頼めたね、とがんばったラピスを褒めていた。

ただ、ルリは…

 

「あれ?なんでしょうか、この書類……」

 

自分の自慢でもあるほど長く伸ばしたツーテールの髪に当たった書類…

入った家に隠れて…だけど、自分のいることを象徴しているようにも見える書類を見つめ、目をつける。

ナデシコCの艦内補充品の在庫と、運搬に関する書類でサブロウタとハーリーの署名が書かれていた。

そして、家のオムライスに、かつてルリが食べたことのあったハーリーのオムライスの匂い

更には、指につけていたバンソウコ…

そして、中に入っていた紙が一枚

 

『書類を渡しに来たのですが、ルリさんはいなかったので書類をここにおいておきます。

ラピスさんの傷は僕がやってしまったことなので、できるだけルリさん、お咎め無いようにしてください。

                                                       マキビ・ハリより』

 

まったく、ハーリー君もやってくれます……

でも、ラピスを見る限り…ちょっと妬けちゃいます。ラピスに。

 

 

 

そこには、凄いでしょうっ♪と言う、ちょっととだけ成長したラピスの姿があった…

 

かつて、自分にチキンライスを教えてくれたアキトと同じように。

目の前に、同じチキンライスのオムライスを食べて喜んでいるラピス…何かの因果が知らないが…

だから、ルリは少し外に出ますと言うと、ウインドウ通信をかけた。

留守電状態だったが、そのままルリは留守電を残した。

 

 

 

 

「ハーリー君、ラピスのこと、ありがとう。お礼に、今度、私と2人だけで出かけましょうね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書き

 

 

ラピス様の精霊(光の精霊アスカかそれとも闇の精霊シャドウ(笑)か…)が、これを書けと仰せになったのです。

暗いシリアス系になりそうな本編の補完的に意味合いも含めて、われはこれを仰せ使いました。

ああ、我らのラピス様、アキト×ラピスが作れない我に裁きの光を…(嘘)

 

 

 

 

う〜〜ん。ちょっとアビスのアリエッタの影響も受けてしまったのか、最後の方ではラピス様が可愛げに…(笑)

無口で、だけど純真な少女にしたのに

ルリ×ハリ(もしくはハリ×ルリ)の話が本編の大まかな流れなのに、これだけ読むとハリ×ラピスっぽく見えちゃった♪(笑)

 

気分はなぜかネガティブゲイト♪(オイオイ……汗)

もしくはビックバンッ!(それも…問題ですけど)

 

本編との関連性もありますし、なぜかラピス様とカナを顔見知りにしちゃったし…

これが無意味に拡大解釈されて、今後の話に関わるのか?(自分でも分かりません。なんて言っても設定に無いことです)

ああ、耳元でネガティブゲイトの言葉が連続で鳴り響くっっ!!(本当だったりして)

 

ただ、ラピス様とあくまでもアリエッタ嬢は見た目が似ているレベルですけど(ラピス様の場合、公式な性格っていうかそんなものが無いし)

 

でも、ラピス様とハーリーの仲に嫉妬するルリなんて、ナデシコSS界初めての快挙だろうッ!!!(人はそれを愚挙という…汗)

ちなみに、最後のルリのいう2人だけというのが本編第一話に繋がったりするんですね(今、適当に考えました)

 

ルリちゃんは料理があまり出来ないことを仮定しておりますが、ラピス様を立たせるための皮肉の策です。気にしないでください。

 

とまあ、ラピス様最高と、ハーリー君好きでもある自分がなんでこんなことを書いたかなんて・・・

 

まあ、それならアリエッタ嬢の話を書くべきなんですけど、いったい何を書けば良いの?

っていうことで、なぜかラピス様に白羽の矢が立ってしまったと、そういうことです。

でも、これでラピス様がやみつきになったかもしれない…最低でも本編での彼女の地位向上は確かだ。

 

 

まあ、そうすると後書きがアリエッタだけで終わるので、ここでラピス様の元『ラピス・ラズリ』の宝石の話を一つ。

ラピス・ラズリは『ラズリ』をアラビア語の『アル・アズワルト』が語源で、意味は『空や青いもの』を刺します。

ラピスはラテン語で『石』です。

 

……ははは…いつも『ラピス』とか呼んでいるけど、皆さん揃って『石』『石』って呼んでいるんですね…(笑)



もっと進めば、ナデシコ世界での『ネルガル』は古代バビロニア語で『火星』という意味と本編で言っているのですが

その時代に、既にその書物の楔系文字の中にラピス・ラズリの記述があったともされます。

現在まで伝わっている宝石の中で中世のラテン語をそのまま残したのはラピス・ラズリだけだとか…

楕円形にカットされたラピス・ラズリは、それ自身が『天の川』にも見えるそうですが…

出た出た『天の川』から連想できる『天河』…(笑)

もっといえば、ラピス・ラズリはイギリスの誕生石で9月に属します(アメリカだと12月なのですが…)

9月は秋、ほらでた『アキト(明人なんですが、それはご愛想)』(爆笑)

ラピス・ラズリ(ルリルリ)とアキト君は切っても切れない仲、ということですかね?

 

どっちにしても、外伝風でのほほん系の文章を一つ作りたかったのも事実ですし、一緒にね♪

最ものほほん系の文章か?といわれれば、そうなんですけどね…あはは……


では、シリアスで話が不透明な本編同様、この外伝(番外編)もよろしくお願いしますね。

 

 

 

補足

ちなみに、ルリの髪が『ツーテール』と書いてありますが、ファッション用語ではこれが正しい言い方なんです。

ツインテールは主にアニメ等で使われている言葉で、一般にも定着しつつありますが、こんな言葉は存在しません。

よって、今回は厳密に内容を解釈するためにあえてツーテールを使用しました。